- 2017年6月11日
アマゾン、ベトナム進出へ
1兆円市場に照準 TPPなど追い風に
(日経電子版)[2018/3/14]
ネット通販世界大手、米アマゾン・ドット・コムがベトナムに進出する準備に入った。1億人近い人口を持ち、スマートフォン(スマホ)が普及した同国はネット通販がこれから急拡大するのは確実で、2020年には市場規模が1兆円に達するとの試算もある。環太平洋経済連携協定(TPP)に参加するベトナムは商品の調達先としても有望で、アマゾンのアジア戦略のカギを握る。
「アマゾンのプラットフォームを使えば、家のパソコンから世界中に商品を売ることができる」。14日、ハノイで開かれた「ベトナム・オンライン・ビジネス・フォーラム2018」でアマゾンのグローバル営業を担当するギジェ・セオン部長は力説した。ベトナムのネット通販がこれから急成長する可能性があると強調した。具体的な計画には触れなかったものの、事実上のベトナム進出宣言とみられる。
アマゾンは3月上旬、ベトナムの電子商取引(EC)関連会社140社でつくるベトナム電子商取引協会(VECOM)と提携した。アマゾンは自社のプラットフォームを通じて、年内にもベトナム企業が海外で商品を販売できるようにする。
第1弾としてVECOM会員企業の輸出を支援、その後は自社倉庫や在庫を持たない「マーケットプレイス」の形でベトナム市場に参入する公算が大きい。軌道に乗れば、日本や米国など同じように大型の自社倉庫を造り、本格的にネット通販を始めるもようだ。
ベトナムのネット通販では、地場IT(情報技術)最大手のFPTが「センドー」を手掛けるほか、中国アリババ系の「ラザダ」、同じく中国系の「ティキ」「ショッピー」も展開する。ほかに交流サイト「フェイスブック」で個人で商品を販売する人も多い。
ネット通販市場の成長性は大きい。ハノイ、ホーチミン市の1人当たり国内総生産(GDP)は4000~5000ドルに達し、自動車、家など耐久消費財の売れ行きは好調だ。16年時点の国内市場規模は50億ドル(約5300億円)と日本の約30分の1の水準だが、20年には2倍程度に膨らむと予測されている。
アマゾンにとって製品調達先としての魅力も大きい。ベトナムは繊維製品などの生産に強みを持つ上、8日に署名されたTPPに参加しており、アマゾンが進出済みの日本やシンガポールへの輸出がしやすい。18年から東南アジア諸国連合(ASEAN)全域で域内関税もほぼゼロになったことも追い風だ。
ベトナムでのネット通販が普及するための課題の一つが物流だ。ベトナムは小口物流が整っておらず、主な担い手は荷台付きバイク。道が狭いうえ物流会社の小口サービスが少なく、日本からは14年にヤマト運輸が参入した。運転手による荷物の持ち逃げも後を絶たず、優良な運転手がどこにいるかを確認できるアプリが人気になるほどだ。
決済も今後の課題。クレジットカードの普及率は10%程度、銀行口座の保有率も30%以下で、決済は現金が中心だ。アマゾンが参入する場合、信頼できる決済システムの構築が必要になる。
ラザダを通じて事実上ベトナムに参入しているアリババは17年11月、ベトナムの決済会社ナパスとも業務提携した。世界のECの巨人であるアマゾンとアリババがベトナム市場で競うことになりそうだ。
(以上)